無題 名前: 番頭屋番頭 [2014/03/27,02:29:22] No.1839
観るでもなく流しっぱなしのテレビからなにやらスポーツ中継らしき番組が始まる
ブラスを効かせたハイテンションな音楽が流れ始め、3DCGの立体ロゴがクルクル回りこんだ後ビタッと正面で決まる
「世界日本2014」
なんだかすごいタイトルだ。エコーの掛かったバリトン声優がなぜか英語訛りでタイトルコールする
ハイな音楽にボーカルが乗り始める。歌だったのか。明らかにジャニーズらしき若い男声ユニゾンで明るく歌い上げる
「♪ニッポン・ジャパ〜ン!ニッポンジャパーン!」歌詞はいかにもなジャニーズ風ジャパネスクでかすかにうんざりする
停止していた3Dロゴが再びいそいそと移動を始め、アップになりながら画面手前に消えるとロゴの隙間から煌々と照らされた陸上スタジアムが映し出される
超満員の観客がコールを鳴り響かせ、すでに紙吹雪や色とりどりの風船が空中に舞い上がる
アナウンサーが万感の思いを込めて「いやあ、ついにこの日がやってきましたねえ!」と解説者に振る
解説者は感に堪えないらしく重々しく一言「そうですね〜」と応えるのみ
アナウンサーは大会の意義や素晴らしさを視聴者に向けてとうとうと語りかける。聞き流してるが「新時代の幕開け」や「全国のファンが長らく待ち焦がれた」や「全日本選抜選手団ニッポンジャパンの雄姿が」など大袈裟とも思える形容が並ぶ

この辺で怪訝な気分になる。いったい何の競技なんだ?
アナウンサーの語り口はお馴染みの皆さんにこの競技が何なのかいまさら説明するのも野暮と心得てるらしく「待望し続けた国民のみなさん」に向けて期待を煽り上げるばかり
こちとらの疎外感と来たらハンパない
ここで思いつく。そうだ、客席のコールを聞けば野球かサッカーかくらいはわかる。アナウンサーの長舌の語りの背後のスタジアムの声に耳を澄ます
「ニッ・ポン!ニッ・ポン!ニッポンニッポン ニッ・ポンッ!」
三々七拍子でニッポンコールしてる。なんだこれ。どうやら自分が知ってる競技ではなささそうだ

馬鹿馬鹿しくなって出かけることにする。そもそもスポーツ中継を見る習慣なんかない。どんな競技か知ったことか
それでも出先で用事を済ませた後にファストフードコートで紙コップのコーラを飲んでいると、観ていた番組の事がふと頭に浮かぶ
ハッとする。なぜ気づかなかったんだろう
「世界日本」「ニッポンジャパン」
競技名は「ニッポン」だ!
何の競技か。ニッポンと名付けられるほどだから日本起源のスポーツだ。そしてスタジアムで開催される陸上競技だから駅伝とかじゃない
天啓の如く理解が急速に頭の中で立体パズルのように組み上がる。間違いない。「ニッポン」とは、パン喰い競争だ

フードコートの混雑の中、俺はただ独り深く深く納得していた


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